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前報までの一連の研究の結果をもとにして写真の分光増感の機構を考察し,修正電子伝達機構を提案した。すなわち,与えられた条件の下で, 光励起された色素からハロゲン化銀へ注入された電子と正孔のうち, 電子が潜像を形成する力が正孔が潜像を破壊する力を上まわる場合に,色素によるハロゲン化銀乳剤の分光増感が観測される。この機構に従い,フェノサフラニンが特定の条件の下で分光増感能力を有する事実を説明した。一方,色素の光酸化・光還元反応を写真の分光増感と共通の因子-準フェルミ準位とハイパー酸化還元電位-で説明することができた。これらの事実から,色素の光酸化・光還元と写真の分光増感はともに光励起された色素が引起こす酸化還元反応の一部と見なすことができ,これらは色素のフェルミ準位の高低によって支配されることを明らかにした。

2,2'-キノシアニン(I)のAgXへの吸着に対するハロゲンイオンの種類による影響を検討した。Iの水溶液からハロゲン化銀への吸着では, ヨウ素塩のAgI への吸着を除いて, 平衡濃度が10-4mol/l にいたるまで,Langmuir型の単分子層吸着を示した。飽和吸着量と吸着熱は,Iの臭素塩のAgIへの吸着で,それぞれ3.95×10-6mol/m2,11.3kcal/mol,臭素塩-AgBrで2.8×10-6,9.4,塩素塩-AgClで2.0×10-6,8.6であり,単位表面積あたりの吸着量は,吸着の強さに依存することがわかった。可視吸収スぺクトルではハロゲンイオンによる違いはみられなかったが,赤外吸収スぺクトルでは,ハロゲンイオンの相違などにより,CH面外変角振動に分裂の有無を認め,ビフェニルでの同様の現象と対応させて考察した。その結果,Iは溶液中では非平面性であるが,AgX表面では平面性を保っていることが示唆された。

写真の分光増感作用の研究に,あるいは実用面において,各種写真増感色素の吸収極大波長(λmax),および,感光極大波長(Smax)の知識はきわめて重要である。著者らは,半経験的LCAO-MO法を用いて,写真増感色素として代表的な23種の対称型シアニン色素の, λmaxとSmax を計算した。その結果, シアニン色素の最大波長の吸収はB1 に属し, 最高被占準位から最低空準位への電子遷移に相当し,色素分子の長軸方向の遷移モーメントを持つことを確かめた。また,種々の溶媒,およびハロゲン化銀のλmax に対する影響をMcRae の溶媒效果の理論式を用いて検討し, これらと色素との相互作用が, 広義のvan der Wa-als力(分散力,配向力,誘起力)で説明できることを明らかにした。以上の結果をもとにして,色素の最高被占準位と最低空準位のエネルギー差の計算値を,λmaxおよびSmaxの実測値と対応させたところ,きわめてよい一致が得られた。

キサンテン系色素の酸化亜鉛に対する吸着現象を, 吸着量, 吸着等温曲線, 吸着熱および吸着色素の可視反射スペクトルを測定し,分子軌道法による色素の電子状態の計算値と併せて検討した。その結果,キサンテン系色素の酸化亜鉛への吸着は,クーロン力とvan der Waals力に基づくことが明らかにされた。クーロン力は,酸化亜鉛表面のZn2+と色素のカルボニル基との間に働く, 局所的な静電引力に基づくものと考えられる。一方, 色素の酸化亜鉛への吸着熱は,5.9kcal/mol(ローズベンガル) , 5.4kcal/mol(エリトロシン)および5.0kcal/mol(エオシン)となり,色素分子の分極率との間に平行関係を示したので,色素と酸化亜鉛の間に働くvan der Waals力には,分散力が寄与していることが示された。また,色素の飽和吸着量と最適添加量の比較から,キサンテン系色素は酸化亜鉛表面では,分子状態で吸着して分光増感作用を行なっているものと考えられる。

ハロゲン化銀およびハロゲン化アルカリに吸着した写真用減感色素, フェノサフラニン(I)とピナクリプトール・グリーン(II)の蛍光スペクトルを測定した。その結果ハロゲン化銀への吸着により, Iの蛍光は消光されるがIIは消光されないことが明らかになった。写真用増感色素, エリスロシン(III)とチアカルボシアニン(IV)は, ハロゲン化銀への吸着により蛍光が消光されること はすでに判っている。一方, ハロゲン化銀粒子の焼出し光分解に対する分光増感能力を調べたところ,IIIとIVは増感能力を有するが,IとIIは増感能力を持たないことが明らかになった。以上の結果, 励起状態の色素では,IIIおよびIVから臭化銀へ電子が, またIから臭化銀へ正孔が効率よく移動し, IIから臭化銀へは電子および正孔の移動の効率がよくないことが示唆された。これは,すでに著者らが提出した“修正電子伝達機構” を支持するものである。

写真の分光増感,および減感作用の機構を明らかにするためには,写真用色素とハロゲン化銀のエネルギー準位の位置の相対的関係についての知識が必要である。分子のエネルギー準位に関する知見は, 間接的にポーラロ半波電位から得ることができる。すなわち, 芳香族炭化水素など種々の化合物について, 最低空準位elv の計算値とポーラロ半波電位E1/2 との間に直線関係が認められている。本研究では,前報で得られたシアニン色素とナフタリンのelvの計算値をE1/2と比較し,両者の間に直線関係の成立することを確かめた。これらをもとにして,各種シアニン色素の気相の電子親和力,およびイオン化エネルギーとして,それぞれ1.1～2.2eV,および6.4～7.8eVを得た。一般にメチン鎖が長くなるほど,電子親和力は大きく,イオン化エネルギーは小さいことが明らかになった。

(1) From the polarographic standpoint, the behavior of reducing the dissolved oxygen by sodium sulfite is investigated in various kinds of supporting electrolytes. (2) The efficiency is most prominent in neutral solution and becomes less effective towards basic. (3) Influence upon the pH of the solution by the addition should not be neglected. (4) There would be no effect to the reducible substance. (5) Its reducing action still proceeds in acidic solution. (6) The stock solution of sodium sulfite should be as fresh as possible. But a too fresh solution in 5∼10 min. after preparation does not show the effect. The reason is not yet clarified. Ten or more days after preparation, it becomes less effective.

An intermediate species of thephotoreduction of Cr(VI)to Cr(III)was detected with rigid matrix of ammonium dichromate solution containing reducing agents at -196°C.The intermediate was observed by spectrophotometry in the aqueous rigid matrix and the temperature dependence of the spectrum of the intermediate is discussed. The spectrum of blue intermediate(λ max 600mμ, e= 1000), the life time of which is more than 40 hrs at -196° C, decreased slowly with the increase of the temperature from -196° C and disappeared completly at about -140° C, near the glass transition temperature of water.It is confirmed that the intermediate is quite different from the final phatareductian product(Cr(III))and from the alcohol radical which could be produced by oxidation of alcohol during phatareduction of Cr(VI) to Cr(III).

シアニン色素と臭化銀との相互作用および臭化銀の格子欠陥部分の影響を,吸着色素の可視および赤外吸収スペクトルより検討した。次の二つの点から検討した結果,シアニン色素の分子構造は,臭化銀への吸着によっても変化しないことが示された。(1)臭化銀に吸着したシアニン色素の励起エネルギーの実測値と半経験的LCAO-MO法による計算値の比較。(2)臭化銀に吸着したシアニン色素の赤外吸収スペクトルと色素結晶のスペクトルの比較。次に,通常の写真乳剤では臭化銀表面の欠陥部分により強い相互作用を受けた色素分子の数が,1012/cm2より少ないならば,色素から臭化銀へのエネルギー伝達に対する欠陥部分の影響は十分小さいことを考察した。そして,1012/cm2程度の吸着量の場合の吸着シアニン色素の可視および赤外吸収スペクトルと,吸着量の多い場合のスペクトルとの間に相違が認められなかったことから,本研究で用いた試料では,色素から臭化銀へのエネルギー伝達に対する欠陥部分の影響が大きい可能性を支持する結果は得られなかった。

写真用色素の分光増感作用と減感作用の機構を, 電子論的な立場から考察するために, 著者らはさきに, 代表的な写真用増感色素であるシアニン色素のπ 電子エネルギー準位を, 分子軌道法を用いて求め, 写真作用との関係を検討した。本研究では, 写真用減感色素をも含む塩基性色素のπ 電子エネルギー準位を, 分子軌道法を用いて電子計算機により計算し, ポーラログラフ半波電位E1/2 および励起エネルギーEmax と比較検討した。その結果, 種々のシアニン色素の最高被占準位eho と最低空準位elv の中点の位置はほぼ等しく, 塩基性色素のeho はほぼ一定であることが明らかになった。また, E1/2 とEmax が色素のπ 電子エネルギー準位を反映するものであることが示され, E1/2 とEmax をもとにしても, 色素のπ 電子エネルギー準位を求め得ることが示された。得られた色素の電子エネルギー準位を写真作用と比較したところ, 減感作用を示す色素の最低空準位は, エネルギー的に低く, 増感作用を示す色素の最低空準位は高いことが明らかになった。

n型半導体であるTiO2(ルチル)を電極に用いて分極挙動を測定した。光照射しない時にはカソード分極下で水素発生が起こるが,アノード分極下ではほとんど電解電流が流れず顕著な電解整流作用を示した。TiO2電極表面に光照射すると,カソード電流は変化しないがアノード電流は著しく増加する。この電流はTiO2のバンドギァプ3.0eVに相当する415mμ以下の波長の光によってのみ生じ,また電流の大きさは光強度に比例する。立ち上り電位はpH4.7では-0.5V(vs.SCE)である。この電解酸化反応は従来n型半導体で報告されている電極自身の溶解反応ではなくて,水の電解による酸素の発生であることを確かめた。このことはいわゆる平衡電位より約1V以上も卑な電位で酸素発生がおこる“光増感電解酸化”であり,光のエネルギーを半導体が吸収したためである。またI-のI2への酸化も平衡電位より卑で起こることを確かめた。機構については半導体のバンドモデルから考察した。

The electronic states of benzene diazonium cation were calculated by a method similar to that of Pariser and Parr. On the basis of the calculations, the 259 mμ and 295 mμ absorption bands were attributed to 1A1–1A1 and 1A1-1B1 transitions respectively. When the sample was irradiated in an alcoholic solution by a 295 mμ light, no ESR signal was detected, but fluorescence and phosphorescence were observed; the fluorescence and the absorption spectrum of 1A1–1B1 transition have the correlation of a mirror image to each other. On the other hand, upon irradiation by a 259 mμ light, this sample showed an ESR spectrum which was attributed to the phenyl σ-radical, but no fluorescence or phosphorescence was observed. From the above experimental results and theoretical considerations, it was concluded that the electronically-excited benzenediazonium salt releases its excess energy by the following processes: (1) From the excited 1B1 state, there occur radiative transition to the ground state and intersystem crossin...

ハロゲン化銀写真乳剤に対する分光増感作用を, 励起色素からハロゲン化銀粒子への電子移行として説明する場合, 増感色素の励起準位は, 臭化銀の伝導帯の底(-3.5eV ) 近くか, 上になければならないと考えられているが, 色素の励起準位に関する十分な知見はまだ得られていない。本研究では, 芳香族炭化水素を例にとり, 気相, 固相および吸着状態でのイオン化エネルギーを,定量的に説明できる関係式を導き, これを用いて, 臭化銀粒子に吸着したシアニン色素のイオン化エネルギーと励起準位を計算した。その結果, 乳剤中で臭化銀粒子に吸着したシアニン色素のイオン化エネルギーは, 4.7～6.0eVで, 色素結晶の外部光電効果の結果と良好な一致を示した。また, 励起準位は-2.9～-3.7eVで, 臭化銀粒子に吸着した励起色素から臭化銀への電子移行は, エネルギー的に可能であることがわかった。上記の結論は, 吸着色素が孤立状態でも, 会合状態でも, 同様に成立することが示された。また, カチオン, アニオンおよび中性などの, 荷電の異なる増感色素についても上記の結論が適用できることが示唆された。

前報までに得られた色素の電子状態の知識を基にして,写真作用を議論するには,色素とハロゲン化銀との相互作用の性質を知る必要がある。本研究では,吸着色素の電子スペクトルを溶媒効果の立場から検討し,シアニン色素とハロゲン化銀の相互作用が,クーロンカとvan der Waals力に基づくことを示唆した。また,シアニン色素は+1価の荷電をもつが,溶液中あるいはハロゲン化銀表面では,溶媒の分極やハロゲンイオンの雰囲気で,荷電がほとんど中和されることを考察しこれにより,色素の吸着熱の原因はクーロン力ではなく, van der Waals力であることを示唆した。また, van der Waals力の中でも, 分散力と溶質永久双極子・溶媒誘起双極子間力が吸着熱に寄与することを明らかにし,色素と吸着媒の分極率が大きいほど吸着が強いことを示唆した。

色素の減感作用の機構を電子論的な立場から考察するために,シアニン色素とアザシアニン色素の写真乳剤中での電子親和力を,前報と同じ考え方で計算した。その結果,乳剤中の色素の電子親和力は,励起準位とゼロレベルとのエネルギー差にほぼ等しいことが明らかになった。したがって,電子の授受は,色素分子の励起準位と臭化銀の伝導帯との間で行なわれるものと考えられる。シアニン色素の乳剤中での電子親和力は臭化銀の電子親和力とほぼ等しく,メチン鎖の長い色素ではやや大きくなっている。これは,メチン鎖の長いシアニン色素が,増感作用と同時に減感作用を示す事実を,エネルギー的観点からよく説明している。また,アザシアニン色素のうちで,強い減感作用を示すものの電子親和力は,増感色素や臭化銀の電子親和力よりかなり大きいことが明らかにされた。これらの結果は,減感作用は色素が臭化銀に対して捕獲中心あるいは再結合中心として働くためであるとする考えを支持しているものと考えられる。

写真の分光増感作用の機構を考察するためには, 写真用色素のイオン化エネルギーIP とともに, 電子親和力E A を知る必要がある。本研究では,Matsenの式に従い,ポーラログラフ半波電位E1/2の測定値から,真空中と媒体中での分子のEAの相違を定量的に取り扱うことにより, 色素のE A を求めた。その結果, 臭化銀写真乳剤中の色素のEA は, EA (eV) = E1/2( Vus.SCE)+4.38で与えられることがわかった。実測値との一致は良好であった。また,乳剤中の色素のEAは,励起電子エネルギー準位と真空準位のエネルギー差にほぼ等しく,臭化銀と色素との電子交換は,色素の最低空準位と最高被占準位を介して行なわれることが示唆された。既報の結果に基づき, 色素の準フェルミ準位eF を, eF=-(EA+IP)/2 で定義した。その結果, 写真用増感色素の準フェルミ準位は臭化銀の固有フェルミ準位よりエネルギー的に高く,減感色素の準フェルミ準位はこれより低いことが示された。

写真用色素による減感作用と現像抑制作用を区別して観測するため,フェノサフラニン(I),チアカルボシアニン(II),チアジカルボシアニン(III)およびチアトリカルボシアニン(IV)を用い,次の順序で処理したフィルムの写真感度を比較した。(A)露光→色素の吸着→現像・定着。(B)色素の吸着→露光→現像・定着。その結果,色素の吸着量が増すとフィルムAもBもともに感度が低下する。フィルムAの感度の低下は色素の現像抑制作用に基づくものと考えられる。吸着色素の可視反射スペクトルの解析から,吸着色素が会合を起こすと現像抑制が強くなることがわかった。色素I,III,およびIVではフィルムBの感度がAに比べて著しく低い。これは,これらの色素による減感作用に基づくものと考えられる。色素I,III,およびIVの電子親和力は色素Iあるいは臭化銀に比べて大きいと考えられることから,色素による減感作用は,吸着色素による臭化銀の自由電子の捕獲に起因することが示唆される。

The electronic structures and electronic absorption spectra of m-fluoro-, m-chloro-, m-bromo-, and m-methoxybenzenediazonium cations were studied by making molecular orbital calculations, and by measuring the near-ultraviolet absorption spectra. From the calculations it is understood that when an electron-donating group is introduced at the m-position of the benzenediazonium cation, a mixing of the lowest locally-excited 1B1 state within the benzenediazonium cation and the intramolecular charge-transfer state arising from the electron transfer from the electron-donating group at the m-position to the lowest unoccupied molecular orbital of the benzenediazonium framework comes to show a large contribution of the substituted cation in the lowest excited state while at the same time the energy of the corresponding state is lowered. The ground and the excited 1A1 states of the nonsubstituted cation are not so greatly affected by the m-substitution as is the 1B1 state. The degree of the mixing of the 1A1 and 1B...

重クロム酸塩は還元剤の存在下で中心クロム原子の6価から3価への光還元反応を起こす。この還元過程を調べるために,77°Kの光照射下で電子吸収スぺクトルの変化を観測した。重クロム酸アンモニウムのEPA溶液は77°Kで,近紫外部(350～380mμ)にCr-Oの伸縮振動にもとづく6個の振動構造をもつ吸収帯を示し,365mμおよび300mμ以長の光照射によって610～620mμに吸収極大をもつ吸収帯が生ずる。この吸収帯は昇温効果および溶媒効果などからCr(IV)あるいはCr(V)の生成によると考えられ,重クロム酸塩の6価から3価への還元反応はCr(IV)あるいはCr(V)の中間還元状態を通って起こることがわかった。

1) The solution of o-nitroanisole, o-chloronitrobenzene and o-nitrophenol is investigated polarographically with the intention of their simultaneous determination. 2) The most suitable supporting electrolyte solution for the above object is the mixture of 4 parts of 1 N sodium hydroxide and 1 part of methanol. 3) Although this solution is not buffered, the variation of concentration of one component does not exert appreciable influence upon the wave-heights and the relative positions of the waves of other two components. 4) o-Nitrophenol can be determined directly from the ordinary polarogram. The accuracy of determination is under ±10%. 5) The residual current compensation gives aid to the determination of o-nitroanisole and o-chloronitrobenzene. By passing the compensating current very excessively, their reduction waves become better defined. The accuracy of determination is +8∼−17% for o-nitroanisole and −24∼−9% for o-chloronitrobenzene. 6) The half-wave potentials of three compounds, 5×10−4 M/l. in 1 ...

白金作用電極上に可視光を照射しながらチオニンの定電位電解を行なった。0.1NKCI水溶液に溶かしたチオニンは,-0.2から約+1.0V(vs.SCE)の電位で電解しても電解されず,また還元剤を含まなければ,チオニンの0.1NKCI水溶液に単に可視光を照射しただけでは,還元も退色もほとんど起こらない。しかし光照射しながら定電位電解を行なうと,チオニンが徐々に退色されることがわかった。さらに,このチオニンの退色は,一部は無色のリューコチオニンへの還元によるものであり,一部は酸化によって無色の物質に変わるためであり,後者が主要な退色過程であることが明らかとなった。これらの結果から,電極で反応しているのは励起状態のチオニンであり,しかも,電極表面で励起したチオニンのあるものは酸化され,あるものは還元される。すなわち,電極での励起分子の酸化と還元が同時に起こっていると結論される。

WE have previously defined the quasi-Fermi level eq−F and the hyper-redox potential Ehyper of a molecule as follows1 where elv and eho are the lowest vacant and the highest occupied electronic energy levels of the molecule calculated by the HMO method (Huckel approximation method)2 E½ and Emax are its polarographic half-wave reduction potential and excitation energy, and C is constant. It was found that the difference in power of spectral sensitization of the photographic process among various dyes could be explained by the values of their eq−F and .

写真の分光増感作用の機構を検討するために,写真的に活性なハロゲン化銀と,写真的に不活性なハロゲン化アルカリとに吸着した写真用増感色素( エリスロシンとチアカルボシアニン) の蛍光スペクトルを測定した。吸着色素の会合状態, 吸着量, および吸着媒表面との相互作用の性質は, 各吸着媒に対して同一であることを確かめた。励起光には, 500mμ 以上の単色光を用い,観, 観測された蛍光は,蛍光極大波長の位置と励起スペクトルから,吸着色素によるものと帰属した。測定の結果,これらの色素の蛍光は,ハロゲン化銀への吸着により著しく消光されることを確かめ,これが励起色素からハロゲン化銀への電子あるいはエネルギー伝達に基づくことが示された。この結果,写真の分光増感作思は,109sec-12以上の速さで起こり,増感色素の最低励起一重項状態によって引起こされることが明らかにされた。