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症例は72歳，男性．検診で胸部異常陰影を指摘され近医を受診，肺小細胞癌の診断にて治療目的に当センター紹介となった．PETにて左肺門部から縦隔リンパ節の他に，虫垂部にもFDGの高集積を認めた．腹部CTにて虫垂は壁肥厚を認め，その先端は嚢胞状に拡張しており，内腔の閉塞が疑われた．肺小細胞癌虫垂転移，原発性虫垂癌を鑑別診断として，穿孔の危険性を考慮し化学療法に先行して腹腔鏡下虫垂切除術を施行した．術後病理検査にて肺小細胞癌虫垂転移と診断された．術後経過は良好に経過し，現在化学療法継続中である．肺小細胞癌虫垂転移は稀だが，本症例では術前に診断し無症状のうちに切除することが可能であったので文献的考察を加え報告する．

目的:大腸癌に対する腹腔鏡補助下リンパ節郭清の安全性・根治性に関し，利点・欠点をもたらす因子を明瞭にすることを目的とした．方法:広島県内26施設の外科医に，大腸癌リンパ節郭清において開腹手術に対する腹腔鏡補助下手術の利点・欠点をアンケート調査した．手術経験総数に応じて経験豊富な施設，中等度の施設，寡少な施設に分類し，分析した．結果:経験豊富な施設，中等度の施設，寡少な施設は，それぞれ8，7，11施設認めた．この手術の利点は，経験数の多寡に係わらず，拡大視および開腹では得られない視野であった．その欠点は，経験豊富でない施設で見られ，術者の技術不足，助手の視野展開の悪さ，およびスコーピストの技術不足により良視野が獲得されないというものであった．結論:腹腔鏡補助下での大腸癌リンパ節郭清の安全性・根治性の獲得には，術者・助手・スコーピストの協調作業による良視野確保が重要であり，手術チームで解決すべき問題である．

胃癌に対する腹腔鏡下手術は有望な低侵襲手術として増加の一途をたどっているが，腹腔鏡下リンパ節郭清は，経験が少ない施設においては安全性・根治性に問題がある可能性がある．この解決には腹腔鏡下手術の利点・欠点を明確にすることが重要である．腹腔鏡下手術を施行している施設を対象とし，腹腔鏡下リンパ節郭清の利点・欠点をアンケート調査した．返答のあった28施設のうち20施設で腹腔鏡下胃悪性腫瘍手術が施行されていた．この手術経験総数が豊富な施設と少ない施設は，それぞれ10施設ずつ認めた．経験数の多寡に関わらず，鏡視下の利点は拡大視および開腹では得られない視野であった．経験の少ない施設では，術者の技術不足，助手の視野展開の悪さ，スコーピストの技術不足によって良好な視野が得られず，視野範囲制限が出現するという欠点が認められた．この欠点克服には，個人の技術向上以上にチームとしての技術向上が重要であると考えられる．

術前multi-detector computed tomography (MDCT) のみにて胆嚢十二指腸瘻および胆石イレウスが診断しえた1例を経験した. 症例は86歳, 女性, 認知症を合併. 右下腹痛を主訴として当科受診. 受診時MDCTにて25mm径の胆嚢結石を認めたが, 主訴の原因となる病変は指摘できなかった. 入院後, 症状は軽快していたが4日目に再度臍部痛および嘔吐が出現した. 緊急MDCTを施行したところ, 胆嚢十二指腸瘻および小腸へ落下した胆嚢結石がイレウスを引き起こしている像が得られた. 超高齢で認知症を合併していたためイレウス解除術のみ施行した. MDCTを用いた“胆石イレウス+内胆汁瘻”の診断は, 低侵襲で, 簡単・迅速に施行でき, 胆石イレウスのような急性腹症例を全身状態が良好なうちに一期的根治術 (イレウス解除術+胆嚢摘出術+瘻孔閉鎖術) に導ける可能性があると思われる.

Seventy-eight patients who were operated on for colorectal cancer from November 1994 to December 1995 were divided into two groups with random sampling; 33 patients were orally administered antibiotics (kanamycin+clindamycin) for chemical cleaning (Chemical Cleaning Group) and 45 patients were not administered antibiotics (No Chemical Cleaning Group) preoperatively. The frequency of leakage and wound infection were compared between the Chemical Cleaning Group and No Chemical Cleaning Group. There was no significant difference in the frequency of leakage and wound infection between two groups. Furthermore, these patients were divided into another two groups by the presence of stenosis (more than one third of the intestinal lumen was stenosed) based on barium enema study, and a similar study was conducted in the stenotic and non-stenotic groups. Entirly no significant difference in the frequency of leakage and wound infection was noted in non-stenotic cases (x2=0.000, p=1.000). It was thought that non-stenotic cases demanded no chemical cleaning. But, there was a tendency in stenotic cases that the leakage and wound infection were found more frequently in the No Chemical Cleaning Group than in the Chemical Cleaning Group. More studies in stenotic cases are needed. This study suggested that the chemical cleaning would not be necessary for patients with colorectal cancer who had no stenosis.