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症例は76歳の男性で, 貧血を指摘され上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚前壁にdelleを伴う粘膜下腫瘍を認めた. 腹部CTで同部に中心壊死を伴う55×52mm大の腫瘤を認め広く膵頭部に接しており浸潤が疑われた. 画像所見から十二指腸gastrointestinal stromal tumor (以下, GIST) と診断, 外科的切除では膵頭十二指腸切除術などの侵襲の高い手術になる可能性を回避するため, 縮小手術の導入を目的としてimatinibを用いた術前化学療法を開始した. 400mg/日の経口投与を開始し, 投与3カ月後の腹部CTにて腫瘤は34×32mmと縮小し, 膵頭部との境界も明瞭となったため4カ月後に手術を施行した. 手術所見では膵臓への浸潤を認めず十二指腸部分切除にて根治切除できた. 現在術後23カ月になるが, 無再発生存中である.

症例は58歳,男性, 2004年6月頃より後頸部に紅斑が出現,顔面・上肢・体幹に拡大したため近医を受診.皮疹部生検にて皮膚筋炎と診断された.悪性腫瘍の精査を行ったがその時点では異常所見を認めず皮膚筋炎の治療として外来にてbetamethasone 5mg/dayの経口投与を開始された. 2005年1月定期検査の腹部CTにて胃小彎のリンパ節腫大を指摘されたため上部消化管内視鏡を施行,胸部下部食道の扁平上皮癌と診断された.皮膚筋炎は安定していた為,右開胸開腹食道亜全摘,後縦隔経路全胃再建,頸部食道胃吻合術を施行した.病理組織学的診断は,深達度sm3の低分化扁平上皮癌であった.経過は良好で皮膚症状も改善した為,退院後betamethasone 3mg/dayにまで減量し投薬を続行したが皮膚筋炎の症状の増悪も認めず経過した.現在術後10カ月になるが再発なく経過している.

症例は84歳,女性,腹痛,発熱を認め,当科紹介となった,当科入院時には下腹部に軽度の圧痛を認め,直腸診で直腸子宮窩に母子頭大の結節を触知した.血液生化学検査で白血球, CRP, CEA, CA19-9の上昇を認めた. CTでは膵尾部に5cm大の腫瘍と肝S6に1cm大の腫瘤,腹水貯留を認め,膵癌の腹膜播種,肝転移と診断した.入院後3日目より腹痛は増強し,腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.開腹すると膵癌播種結節の虫垂転移のため,穿孔性腹膜炎を発症していた.虫垂切除,腹腔ドレナージ術を施行した. 癌の虫垂転移によって2次性虫垂炎を発症することは稀である.今回,われわれは膵癌の腹膜播種により穿孔性虫垂炎を発症した症例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.