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1980年から1997年に手術した腹部大動脈瘤(AAA)191例(非破裂161例,破裂30例)の遠隔期予後を検討した.30日死亡は非破裂群1.2%,破裂群36.6%,在院死亡はおのおの3.1%,53.3%であった.耐術例の累積生存率は5年76.3%,10年42.3%で,一般人口より低かった.非破裂群と破裂群に有意差はなかった.遠隔期の死因は心臓関連死が28.8%,脳血管障害19.2%,悪性腫瘍17.3%,大動脈腸管瘻や再発した真性動脈瘤(真性瘤),吻合部動脈瘤(吻合部瘤)など中枢側吻合部周囲大動脈病変の破裂が9.6%であった.遠隔期に中枢側吻合部周囲の大動脈病変を10%,胸部大動脈瘤を3.7%,大動脈解離を4.2%に認めた.グラフト累積開存率は10年97.4%,15年90.9%であった.AAA患者では術後遠隔期において,冠動脈疾患や大動脈瘤の再発などを早期に発見するために,長期的な経過観察が必要である.

症例は73歳男性である. 1994年2月14日, 突然背部痛が出現し, 近医にて急性大動脈解離IIIbと診断され, 降圧療法を開始された. 1995年6月7日腹部に拍動性腫瘤を自覚し, 圧痛が生じるため切迫破裂として入院となった. 入院時腹部には10×10cmの拍動性腫瘤があり, 圧痛が認められた. 血液検査にて血小板数, フィブリノゲンの低下, FDPの上昇を認め, 消費性凝固障害が疑われた. CTにより腹部大動脈の解離と多発性真性腸骨動脈瘤が判明した. 薬物療法では消費性凝固障害が正常化しないため手術適応とした. 術前に heparin の薬効を確認し, 術中に使用した. 手術所見では腹部大動脈終末部には交通孔があり, 解離腔には赤色血栓が存在していたが真性総腸骨動脈瘤内には赤色血栓はなかった. Y型人工血管で腎動脈下腹部大動脈から両側外腸骨動脈を置換し, 両側真性内腸骨動脈瘤は末梢側で結紮した. 術後は薬物療法することなく消費性凝固障害は軽快した.

症例は71歳の男性で, 左腰痛を主訴に来院した. CTにより, 最大径5cmの炎症性腹部大動脈瘤と左水腎症と診断され, 内科に入院した. 1カ月後のCTにより, 動脈瘤は7cmに拡大し, 後腹膜腔への破裂が判明したため, 緊急手術になった. 瘤の後壁に50×10mmの破裂孔と血腫が存在し, sealed rupture と考えられ, 直型人工血管で動脈瘤を置換した.