子宮頸部原発carcinoid腫瘍は比較的少なく, その細胞診, 組織診, 電顕像についての総合的な報告はまだわずかである.今回われわれは, 細胞診で頸部腺癌と考え, 摘出物の組織診でcarcinoid腫瘍と判明した症例を経験したので報告する.症例は31歳の主婦で, 接触出血を訴え受診初診時の内診で子宮腟部前唇に栂指頭大の易出血性ポリープ状腫瘤を認め, 子宮頸癌Ib期の診断のもとに拡大単純子宮全摘術を施行した.子宮頸部擦過細胞診では, 腫瘍細胞は散在性ないし集塊状に出現していた.核は比較的小型で類円形から楕円形を示し, 大小不同は軽度で核縁は比較的平滑, 肥厚も著明でなく, 顆粒状ないし細顆粒状のchromatin patternを認め, 核小体は1ないし数個認めたが特徴的ではなかった.腫瘍細胞のN/C比は大きく, 細胞質はlight greenで比較的少なく細胞境界は不明瞭で, 頸部腺癌と判定した.摘出物の病理組織像は, H-E染色で好酸性の胞体をもつ小型異型細胞が充実性胞巣状に増殖し, rosette形成を認めた、Masson-Fontana染色は陰性であったが, Grimelius染色では細胞質内に微細な好銀顆粒が染色され, 電顕での検索で限界膜を有する神経分泌顆粒が認められ, 子宮頸部原発の低分化型carcinoid腫瘍と診断された.