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目的:下部直腸腫瘍に対する部分的内肛門括約筋切除術（partial intersphinteric resection;p-ISR）の術後排便機能，quality of life（QOL）を従来の肛門括約筋全温存術（ultra low anterior resection;ULAR）と比較検討した．対象と方法:下部直腸腫瘍に対してp-ISR及びULARを施行した計27症例の術後排便機能およびQOLをアンケートで評価した．結果:p-ISR群12例，ULAR群15例であった．肛門縁から腫瘍下端までの距離は36.9mmと61.0mmでp-ISR群が有意に低い位置にあった．術後Wexner scoreはp-ISR群で高い傾向にあったが，術後3カ月のみ有意差を認めた．排便回数は両群間に差は認めなかった．術後QOLはSF-36の各項目に両群間で有意差を認めなかった．結語:p-ISR後の排便機能はULARと比較して便失禁が多い傾向にあるもののQOLに差を認めなった．今後さらに症例を蓄積した検討が必要である．

15歳男子.発熱と腹痛のため近医を受診した際に腹部CT検査で左上腹部に9cm大の腫瘤を指摘された.血液検査上,白血球数とCRPの上昇を認め,感染性膵嚢胞を疑い手術を行ったところ病理組織学的にsolid-pseudopapillary tumor (SPT)と診断された. SPTは比較的稀な膵腫瘍であり,一般的に若年女性に好発するとされている.また近年β-cateninの細胞内への異常蓄積やβ-catenin遺伝子の異常が存在することが明らかになってきており本症例に対して免疫染色を行ったところβ-catenin, cyclin D1ともに陽性であった.術後経過は良好であり2年間の経過観察期間中に再発や転移は認めていない.

症例は43歳,女性.左腋窩腫瘤を主訴に当科を受診した.理学的所見では左腋窩に2.5cm大の弾性硬腫瘤を触知したが,両側乳腺内に腫瘤は触知せず.マンモグラフィーでは両側乳腺内に明らかな腫瘤陰影,石灰化は認めなかった.エコー上,両側乳腺内には低エコー陰影を多発性に認め,乳腺症の存在が考えられた.左腋窩腫瘤の穿刺吸引細胞診(ABC)の結果は低分化型腺癌の腋窩リンパ節転移と診断され,原発巣検索のため消化管検査,全身のCT検査を行ったが異常所見は認めなかった.乳腺のMRI検査では左乳腺D領域に7mm大の早期濃染する結節状陰影を認めたため同部位のエコーを再度行い,低エコー病変部のABCを行ったところ,悪性所見を認め,本症例は左乳癌を原発巣とする潜在性乳癌と診断した.乳房温存療法を行い,病理組織学的には浸潤性乳管癌(papillotubular type, g, pT1c, pN1, ER(+), PgR(+), HER2(2+))であった.術後は化学,内分泌療法を行い現在まで無再発生存中である.

われわれは直腸原発GISTの術後7年目の肩甲骨転移に対して,メシル酸イマチニブ(商品名グリベック)を使用した症例を経験した.症例は67歳男性で, 1996年直腸粘膜下腫瘍で腹会陰式直腸切断術を行い,病理診断はleiomyosarcomaであった. 1998年肝転移に対して切除術を実施した. 2002年10月右上肢のしびれを自覚し,胸部写真,胸部CTで右第2肋骨に腫瘍を認めた.直腸腫瘍の骨転移と診断し,前方アプローチで1, 2肋骨を含め腫瘍切除術を施行し,病理診断はc-kit陽性のmalignant GISTであった.術後骨シンチグラフィーなどで右肩甲骨へも転移が疑われたため,現在外来でメシル酸イマチニブを投与している.術後1年経過しているが,転移巣の増大は認めていない.

We report a rare case of synchronous multiple carcinomas of the colon. A 65-year-old man visited our hospital because of anal bleeding. Colonoscopy disclosed an ulcerative lesion in the sigmoid colon and 10 polypoid lesions in the ascending and sigmoid colon. After endoscopic polypectomy of the 10 polypoid lesions, anterior resection with lymph node dissection was performed for the ulcerative lesion. Histological study revealed one advanced carcinoma with invasion of the subserosa, 5 early carcinomas with invasion of the mucosa or submosa, and 3 adenomas with moderate to severe atypia. The genetic instability of these 9 lesions was examined using microsatellite assay. In all of these lesions, no replication errors were detected at any of the microsatellite loci analyzed.