Search

特定行為研修を組み込んでいる認定看護師教育課程（以下、B課程）への移行に関する認定看護師教育機関（以下、教育機関）の現状と課題を明らかにするために、認定看護師制度が開始された。1998年から2020年の間に開講していた認知症看護ならびに緩和ケア分野の認定看護師教育課程26機関に質問紙調査を実施した。回答が得られたのは9機関、B課程は1機関であった。2020年4月現在開講している3機関のうちの2機関はB課程の移行を予定しており、その移行理由は、「水準の高い看護実践」と「認定看護師の実践活動の拡大」を目指すためであった。今回の調査では9教育機関中B課程移行予定は2機関だったが、B課程に対するニーズや課題を検討し方向性を決定するとの回答が2機関からあった。B課程に移行する機関の課題は、運営費および教育施設の整備、指導医の確保などのハード面と、受講生確保であった。B課程を継続的に運営していくには、行政や関係機関、医療機関との連携や、B課程の意義の周知や認定看護師の活動拡大に向けた支援が必要である。

日本学術振興会「ひらめき☆ときめきサイエンス」助成によるストレスマネジメントの体験型学習の効果を明らかにする目的で、同意が得られた 18 名の参加高校生を対象に実施終了後の質問紙調査と郵送法で回収した対象者11名のリラクゼーション前後で測定した血圧値、脈拍値、経皮的酸素飽和度、唾液アミラーゼ値、マインドバランス計器から測定した実測値と変化率を調べた。その結果、本体験型学習プログラムへの興味や関心ならびに満足感は 9 割以上と高く、自由記述内容は、《ストレス緩和の重要性》、《体験による学びの満足感》、《他者と交流できた満足感》、《看護職への志向性》の 4 つに集約された。また、リラクゼーション後の血圧値、脈拍値は低下したが唾液アミラーゼ値は若干の上昇が認められた。一方、経皮的酸素飽和度およびマインドバランス総合評価、リラックス度は上昇が認められ、簡便かつ客観的にリラクゼーション効果を実体験できたことにより、ストレスマネジメントの重要性や体験型学習の満足感に繋がったと考える。

不眠の進行がん患者に足浴を実施したことによる睡眠感の変化を明らかにするために、介入開 始前日と介入終了の翌日の朝にOSA睡眠調査票MA版の記入と睡眠に対する実感についてインタ ビュー調査を４名にした。A氏は、介入後のOSA睡眠調査票（MA版）では第Ⅳ因子の平均得点が 上昇し「やっている時は良く眠れた」などの言葉が聞かれた。B氏は、介入後のOSA睡眠調査票（MA 版）では第Ⅰ因子と第Ⅱ因子の平均得点が上昇し「気持ちよく眠れた」などの言葉が聞かれた。C氏は、 介入後のOSA睡眠調査票（MA版）では第Ⅰ因子、第Ⅱ因子、第Ⅴ因子の平均得点が上昇し「ぐっ すり眠れてきた」などの言葉が聞かれた。D氏は、介入後のOSA睡眠調査票（MA版）では5因子 全ての平均得点が上昇し「久しぶりに熟眠したって感じ」などの言葉が聞かれた。以上のことから、 就寝前に行う足浴は入眠過程を改善し睡眠感が変化したことが明らかになった。

緩和ケア認定看護師の5 年目にあたる初回資格更新時の実践力と課題を明らかにし、今後の教育方法やフォローアップ研修、支援の在り方の示唆を得ることを目的に、看護実践報告書の記述から、意味内容ごとにコードを作成しサブカテゴリー、カテゴリーを抽出する質的帰納的分析を行った。結果、緩和ケア認定看護師の初回資格更新時の実践力は、【患者の力を生かした症状コントロール】【苦痛を和らげる因子を活用したケア】【傾聴と信念をヒントにした関わり】【死別の覚悟と家族の悲嘆ケア】であり、特定行為研修の臨床推論力とともに論理的思考力の強化も重要であることが示唆された。

すでに高度実践看護師教育課程を26 単位から38 単位に移行した大学への質問調査から、移行に向けての課題を明らかにすることで、38 単位化を目指す大学の移行に向けた取り組みの示唆を得たいと考えた。独自の質問調査用紙を作成し、82 大学院に発送し31 校より回答を得た。 その結果、大学の体制の課題としては就業しながらでも学べる環境づくりや学部と大学院を兼務している教員がほとんどであり、教員の勤務体制、組織的な大学の体制づくりなどがあげられた。教育体制への課題としては、10 単位の実習の配分と実施時期、医師等の外部講師の確保、実習施設との指導体制の強化があげられ、また、「研究」の位置づけの検討があげられた。さらに、就業しながら学修する学生が多いため、修得しなければならない単位数が増加したことによる学生確保の取り組み、途中で進路変更できる高度実践看護師教育課程と修士論文課程との選択制の導入の必要性が示唆された。

当センターにおける『緩和ケア研修』は、緩和ケアを必要とする患者や家族に対する特化した内容に焦点をあてて企画している。受講したジェネラリスト看護師が『緩和ケア研修』で得た学びは、リンパ浮腫のケアにおいて【リンパ浮腫ケアに関する知識技術の獲得】を基盤に、【自己の看護の振り返りとスキルアップへの意欲の向上】が得られ、【ケア効果の感動と実感】【看護への活力の復活】となっていた。全人的苦痛とアロマ・タッチケアは、【疼痛緩和のエビデンス】と【アロマ効果の実感】、グリーフケアとエンゼルメイクでは、【ご遺体の変化に合わせたエンゼルメイクの根拠の理解】【成長を促す悲嘆ケア】【ご遺体の尊厳と遺族ケア】、危機理論と看護介入は、【分析に基づいた適切な危機介入の重要性】、倫理的課題と看護は、【価値観の分析と意思決定支援】の学びをもたらしたことが明らかになった。

本研究は、高校生16名を対象に行った日本学術振興会「ひらめき☆ときめきサイエンス」助成による『ハンドパワーの極意伝授 ! ～見て、聴いて、触れて体験しよう 癒しの科学と実践～』の教育実践の成果を明らかにすることを目的に、プログラム終了後のアンケート調査とハンドマッサージ実施前後の温度変化を赤外線サーモグラフィーにより調査した。結果、対象者の満足感や興味ならびに関心は約9割以上であり、体験学習を通して《プログラム内容への満足感》以外に、《ハンドパワーの実感とケアの大切さ》、《マッサージ効果の実感と他者への活用期待》、《アロマ作成の楽しさと活用期待》を得ていた。また、マッサージの実施前後の手掌温度は、12名に約2℃の変化が認められ、体験を可視化したこともマッサージ効果の実感や満足感を高め教育実践の成果に繋がっていたと考えられた。今後は、さらに体験学習の効果を高められるプログラム内容や方法を検討する必要がある。

In this study we focused on the change in the students, images of elderly people during the two years. Especially we tried to clarify the change brought about by our lectures on the geriatric nursing and their clinical trainings in the health-related facilities for the aged.

看護を志向する学生には、必然的に他者の「死」に向かい合い、さらに看護者として「死」に至るプロセスに身をおく事が求められる。現在多くの看護教育機関では「ターミナルケア」「終末期ケア」の学習が計画されており、近い将来、死を免れ得ない状況にある人の看護について学習し、学生の考えを深めていくねらいで行われている。今回、授業「治癒困難な成人の看護」の前後において、学生の「生」と「死」に対する考えの変化の様相を分析した。また、臨地実習で終末期患者を受け持った学生や遷延性意識障害の患者を受け持った学生の生と死に対する考えをカンファレンスの発言や看護観のレポートから分析した。講義から臨地実習までの学習を通して、学生の「生」と「死」の考え方が拡大、変容していることが示された。基礎看護教育において死生観を育成することは学生の看護を問い続ける基盤ともなりうる重要な要素となっていくであろう。, It is inevitable that nursing care students face others' “death” experience processes leading to “death”. At present, in many nursing care educational institutions, learning of “terminal care” and “end-of-life care” is planned, aiming at having students learn about the care of those who cannot escape from death in the near future and to develop their thinking. Here, I analyzed phases of changes in students' thoughts on “life” and “death” before and after taking a lesson in “nursing those who suffer from incurable diseases”. In addition, I analyzed the thoughts on life and death of those students who dealt with end-of-life patients during clinical training and of those who dealt with patients with persistent disturbance of consciousness through their statements at conferences and reports on concepts of nursing. My analysis shows that through lectures and clinical training, the students broadened and changed their ideas about “life” and “death.” Fostering a concept of life and death during basic nursing education will be an important element that may become a base for students to continue asking what nursing really means.

本研究では肺合併症予防に有効であるとされる60度側臥位での指尖拍動と手指皮膚温度を測定および分析し、60度側臥位体位保持が循環血液量に及ぼす影響を検討した。その結果、60度側臥位における指尖拍動は、側臥位となった直後の15分間に大きく減少し、特に下側(左)で顕著であった。手指皮膚温度は60度側臥位となってから45分を境に下側(左)手指皮膚温度が急激に減少していた。被験者の自覚症状については、60度側臥位となってから45分後に冷感や痺れといつた苦痛症状が30%を超えて見られた。以上の結果から、60度側臥位では体位保持時間45分を経過すると循環血液量の減少による手指皮膚温度の低下が現れることが明らかとなった。そのため、60度側臥位では体位保持時間を45分程度とすることで循環血液量の回復を促すことができると考えられる。, This paper determined and analyzed the fingertip's pulse and finger skin temperature in the 60° lateral position, which they have regarded effective against prevention of the pulmonary complication, and investigated influence that the retention of the 60° lateral position has exerted upon circulating blood volume. As a result, fingertip beat in the 60° lateral position decreased steeply between 15 minutes of right after being in the lateral position, especially it was notable in the lower (left) side limb. And finger skin temperature was showing a pattern of increase or decrease, similarly in right and left ones However, although (right hand's) finger skin temperature of the upper side limb was increasing, (left hand's) finger skin temperature of lower side limb was decreasing. As for the certain symptom of subjects, painful symptoms like coldness and numbness were seen beyond 30%, after 45 minutes from being in the 60° lateral position. From these results, in the 60° lateral position, it was shown that the decline of finger skin temperature by decrease of circulating blood volume has come out, if the position's retention time; 45minutes has passed. Therefore, it was suggested that setting the position's retention time on about 45 minutes, in the 60° lateral position, has been able to stimulate the recovery of circulating blood volume.

研究目的は、Ｃ型慢性肝炎患者におけるインターフェロン（IFN）療法の中断に関連する要因を明らかにし、治療の継続支援を実施するための基礎資料とすることである。研究対象の選定方法は、外来にて治療中又は経過観察中の患者から治療中断者23人（男性8人、女性15人）をケース（中断群）とし、5歳年齢階級で性・年齢をマッチングさせた治療終了者69人（男性24人、女性45人）をコントロール（終了群）として、後ろ向きケース・コントロール研究（case-control study)を行った。中断群と終了群との比較において、有意な差がみられた要因について多重ロジスティック回帰分析を行い、オッズ比を算出した。IFN療法の治療中断に独立して寄与することが明らかとなった要因（オッズ比）は「うつ傾向あり（6.0）」、「副作用の程度がひどい（5.1）」のみで、他の副作用の症状には統計学上有意な差が認められなかった。また、治療中の患者への身体的・精神的サポートの有無も治療中断と有意な関連は認められなかったが、終了群において治療を中断しようと思ったことのある14人（20.6％）のうち、4人（28.6％）が医療関係者が支えてくれたから継続できたと回答していた。本研究の結果から、専門職が治療開始前にうつ傾向の有無を確認したり、治療中・治療後の患者の心理的な変化を注意深く観察していく必要性が再確認された。また、副作用に関しては、患者や家族に対する事前の情報提供や発現時期に応じた症状軽減に対する迅速な対応が、IFN療法の継続支援には重要であることが示唆された。