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Résumé : Entre les années difficiles de la « déflation Matsukata » (années 1881‑1884) et le « boom des entreprises » (années 1887‑1889) considéré comme le début de la Révolution industrielle au Japon, l’histoire économique japonaise est comme marquée par un vide. En étudiant le port de Moji, à la pointe Nord de Kyûshû, on peut a priori vérifier cette vision générale : un endroit réputé « perdu » avant que le gouvernement décrète en 1889 son ouverture aux exportations internationales, ouvrant la success story de ce port devenant à partir des années 1890 le poumon industriel de l’Asie du Nord-Est… Or, nous montrons ici que les années 1885‑1886 ne furent en réalité pas « vides » mais qu’elles furent au contraire celles de la première ouverture du port au commerce international, à l’initiative d’ une combinaison d’acteurs régionaux et locaux, associant les milieux marchands d’Ôsaka et miniers du Chikuhô sur le port de Moji. Étudiant la structure et la stratégie de l’entreprise, le traitement administratif par le gouvernement de sa demande d’action internationale et l’évolution du marché intérieur et extérieur, nous montrons que l’élément majeur qui explique l’échec des exportations internationales de charbon depuis Moji fut le refus du ministre des Affaires étrangères, Inoue Kaoru d’autoriser à l’entreprise d’employer des navires étrangers. Cela nous amène à interroger les raisons profondes d’Inoue et ses liens bien connus avec le groupe Mitsui, montrant que si les forces fondatrices de la Révolution industrielle japonaise ont bien été régionales, elles ont pu être très tôt contraintes par l’action de certaines forces gouvernementales liées aux grands groupes (zaibatsu) en formation. There is an apparent gap in Japanese economic history between the difficult years of the “Matsukata deflation” (1881‑1884) and the “enterprise boom” (1887‑1889) considered as the beginning of the Japanese Industrial Revolution. This general vision seems confirmed by the study of the port of Moji, located in northern Kyûshû: a place known as “lost” before the government opened it to international exportations in 1889, triggering the success of this port, which became, in the 1890s, the industrial heart of North-East Asia… Yet, this paper shows that 1885‑1886 were in fact not “empty” years, but that they were quite the opposite in fact: the years of the first opening of the port to international trade, in light of the initiatives of a set of regional and local actors, connecting Ôsaka merchants and the Chikuhô mining industry. By studying the structure and the strategy of the company, the government’s administrative answer to its demand for international action, and the evolution of domestic and international markets, we show that the main factor explaining the failure of international exportations of coal from Moji was the Foreign Minister Inoue Kaoru’s refusal to allow the company to use foreign ships. Consequently, we investigate Inoue’s motivations and his well-known connections with the group Mitsui, revealing that, even though the Japanese Industrial Revolution was indeed triggered by regional forces, those have been, early in history, limited by the action of certain government forces linked with the emerging conglomerates (zaibatsu).

市場に氾濫する低品質な不正農業投入財がアフリカで大きな問題となっている。氾濫する不正品のため，農民は収量増大が期待される化学肥料や高収量品種を導入する意欲を削がれ，それが農業技術普及のひとつの大きな足かせとなっている。生産性の改善を通じ農業生産を増大させたい途上国政府にとって，不正投入財問題は解決すべき重要な課題である。本稿では，アフリカの不正肥料の現状と対策をレビューするとともに，これまで分析が進んでいなかった近代日本の不正肥料排除の過程を検証することで，途上国における対策の糸口を探る。近代日本の不正肥料は，政府による取締法，検査官制度，農事試験場の依頼分析制度の導入，供給サイドによる製品のブランド化と特約取引網の確立，そして需要サイドによる共同購入事業という多面的な対策を通じて，昭和期に入り確実に抑制されていった。このような近代日本の経験を検討する中で，途上国への教訓を引き出したい。

途上国の農業融資制度は一般に未発達である。その原因のひとつに，情報の非対称性の下での信用審査の困難が挙げられる。本稿は，協同組合を中心に発展してきた戦前日本の農業金融制度のなかで，組合員のソフト情報（人格など）やハード情報（経済力など）を体系的に蓄積した『信用程度表』の役割に着目し，優良産業組合におけるその運用を詳細に検証する。分析の結果，地縁的関係に基づいて収集されるソフト情報は，ある程度有効活用されており，人格の優れた小農がより融資を受けやすくなっていたことが明らかになった。しかし，相対的にみると，資産など外部からの観察が容易なハード情報が，信用審査においてより重視されていたことも明らかになった。この結果は，『信用程度表』のような社会技術の存在によって，観察しにくいソフト情報が体系的に蓄積・可視化されたとしても，それだけでは，資産の乏しい小農向け農業融資が容易には進まないことを示唆している。

発展途上国では，灌漑施設の維持管理や操作の権限を水利組織へ移管する政策が主流となっている。しかし，水利組織の資金調達能力には限界があるため，大規模な灌漑投資を政府が担うケースも多い。かかる状況下では，情報の非対称性に起因する過少投資や過大投資が深刻な問題となりうる。本稿は，新潟県上郷水害予防組合の史料に基づき，政府と水利組織による灌漑投資の意思決定と費用負担を論じたものである。近代日本では，地方政府と水利組織がそれぞれ投資費用の一定割合を負担する制度を確立し，そのもとで水利組織が主体的に投資決定に関与してきた。また，投資規模により異なる負担割合，および水利組織が先行して費用負担する枠組みを柔軟に採用することで，投資決定の非効率性を抑制する試みがなされてきた。こうした制度における政府と水利組織の望ましい関係性や役割を明らかにすることで，発展途上国の灌漑政策についても重要な含意を導いている。

(特集 「途上国」日本農業の開発経済史 : 経験と教訓)

農産物の円滑な流通には，容量・俵装・品質等の検査制度と標準化が求められる。これらは一般に政府が制度化するが，途上国にはそのキャパシティが不十分なことが多い。本稿は，中央政府の関与なく，米穀検査と標準化が定着した一事例である，近代日本の米市場を検討する。本稿は，その過程を概観したうえで，要因と機序を仮説的に提示する。近代日本では，明治維新以後，米の流通が混乱したが，各産地で移出商等による自発的な移出検査が始まり，後に府県による県営検査へと置き換わり，これが全国に展開した。本稿は，この要因と機序として，産地間競争によって検査と標準化が広がったこと，標準化は価格やシェアの向上に効果があり，産地が標準化の強い誘因をもっていたこと，産地に標準化を実行する組織力，行政・執行能力があったことを提示する。さらに，本事例から，政府主導の標準化の制度化にあたって，教訓と政策的含意を議論する。, (特集 「途上国」日本農業の開発経済史 : 経験と教訓)

農産物の円滑な流通には，容量・俵装・品質等の検査制度と標準化が求められる。これらは一般に政府が制度化するが，途上国にはそのキャパシティが不十分なことが多い。本稿は，中央政府の関与なく，米穀検査と標準化が定着した一事例である，近代日本の米市場を検討する。本稿は，その過程を概観したうえで，要因と機序を仮説的に提示する。近代日本では，明治維新以後，米の流通が混乱したが，各産地で移出商等による自発的な移出検査が始まり，後に府県による県営検査へと置き換わり，これが全国に展開した。本稿は，この要因と機序として，産地間競争によって検査と標準化が広がったこと，標準化は価格やシェアの向上に効果があり，産地が標準化の強い誘因をもっていたこと，産地に標準化を実行する組織力，行政・執行能力があったことを提示する。さらに，本事例から，政府主導の標準化の制度化にあたって，教訓と政策的含意を議論する。

制度の機能と役割を新古典派経済学の手法によって解明し、新たな制度の経済理論の構築を試みた新制度主義は、経済学において確固たる地位を固めつつある。これまでの経済学が市場の議論に終始してきたその範囲を、取引費用や所有権などの新たな概念を適用することによって法、政治、歴史の各分野に拡張することになった。その一方で、伝統的な制度の経済理論を展開してきたアメリカ制度主義とは、その制度認識や経済学方法論や人間観においても一線を画するものとなっている。