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要旨 本研究は、1971 年の「『国民教育制度』計画」（NESP) の背景解明の一端として、1960 年代のネパールにおける国民教育制度整備構想について、「国家教育審議会」(ARNEC) 報告書における初等中等教育令を地方教育行政制度の整備に留意しつつ読み解き、再検討することを目的とする。ネパールの教育行政制度の変遷について、1951 年から1971 年は一般に「地方分権化傾向の時代」と表される。しかし、1960 年代初めの教育法規や教育計画の内容に鑑みれば、同国の地方教育行政制度の変遷についてより複雑な側面を確認することができる。すなわち、初等中等教育令は、学校委員会および校長の権限や職務を明確化することで、地方教育における彼らに一定の自律性を確保している。しかし、同法規ならびに教育法に定められる教育行政制度は、総体としては中央集権化されたピラミッド型組織である。こうした1960 年代の教育法規や教育計画に従って整備された教育行政制度は、1971 年以後における教育の高度な中央集権化の礎になったと考えられる。, As part of the clarification of the background of the National Education System Plan (NESP) in 1971, the purpose of this study is to interpret and reconsider the plans for the development of the national education system in Nepal in the 1960s, while paying attention to the development of the local educational administration system in the Primary and Secondary education Code. The period from 1951 to 1971 is generally referred to as the "tendency of decentralization" in regards to the changes in Nepal's educational administration system. However, a closer look at the educational laws and plans of the early 1960s reveals more complex aspects of the changes in the country's local educational administration system. In other words, the Primary and Secondary Education Code clarifies the authority and duties of school managing committees and principals, ensuring them a certain degree of autonomy in local education. However, the education administration system stipulated in this Code and the Education Act is, as a whole, a centralized pyramid-shaped organization. The educational administrative system developed according to the educational laws and educational plans of the 1960s is considered to have been the foundation for the highly centralized education since 1971.

現在の学校には、「障害者の権利に関する条約」に掲げられている教育の理念の実現に向けた合理的配慮への対応が求められている。このことは、「令和の日本型教育」を実現させていくうえでも不可欠である。しかし、各教科の授業と比べると、教科外の教育活動（特別活動等）では、特別な支援が必要な児童生徒への教育支援の在り方が十分ではない。そこで本論文では、特別支援学校における合理的配慮を取り入れた教育方法を対象とし、特別支援学校の実践事例を検討することで、通常級においても援用可能な教育方法について分析、考察を行う。それを踏まえ、すべての児童生徒の発達を促進させる特別支援教育の視点を生かした教育方法について論じる。

兵庫県立但馬やまびこの郷は公的教育相談機関であり、不登校児童生徒の宿泊体験活動のプログラム（4 泊5 日）を有するユニークな施設である。この先駆けとなる不登校児童生徒の宿泊体験活動を合宿として取り組んできたのが開善塾教育相談研究所である。本論文では、開善塾教育相談研究所がこれまでに取り組んできた合宿に注目し、家庭から合宿参加までどのように不登校生徒をつなぎ、どのような効果を機能させているのかについて検討した。研究方法はエスノグラフィーにより、参与観察者は第2 筆者及び第1 筆者である。分析の結果、参加者の多くは、リアルな生活における様々な体験活動をとおして自信を高め、自尊感情をはぐくむ効果が見られた。

従来、学校で展開される指導・援助の大部分は教師が担ってきた。それが、平成7 年度以降に導入されたスクールカウンセラー関連事業以降、〈教育の専門家である教師〉とは異なる心理や福祉の専門家が新たに学校の職員として位置付けられた。しかし、困難や課題を抱えている生徒やその保護者の援助ニーズに、心理的及び福祉的サービスが適切に利用されているのかを考えると、学校による差が極めて大きい。そこで本研究では、生徒指導及び教育相談に関する教員の意識に着目し、第2 筆者の半構造化面接により収集された定性的データを分析することにより、学校教育における生徒やその保護者等に対する心理・福祉的支援援助の在り方について検討した。

文部科学省が不登校の捉え方を変えてから28 年が経つ。その後、不登校者数は増加を続け、現在なお増加している。この背景には、教員の生徒指導力不足、学校教育問題に係る行政施策、不登校児童生徒への支援・援助のあり方、社会の風潮の変化と共に変わってきた保護者の意識等、様々な要因を挙げることできる。本論文では、スクールカウンセラー及び不登校ひきこもりの訪問相談を専門とする開善塾教育相談研究所の立場から、教員に不可欠な〈教育相談力〉とはどうあるべきかを検討する。方法は、筆者らが関わった事例分析を通して、不登校児童生徒をいかに学校復帰させ、一人一人の進路保障や社会的自立・自己実現をかなえていくかを検討する。

新しい中学校学習指導要領は2021 年度から完全実施されているが、学校における安全教育は学校教育法21 条第8 項「健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うこと」に掲げられた目標を達成するために教科・領域において行われる。安全教育の一つである防災教育は、総合的な学習の時間では「地域や学校の特色に応じた課題」として探究課題に例示され、特別活動では学級活動や学校行事に「地域防災」が題材例として示されている。これらを踏まえ本論文では、川口市立鳩ヶ谷中学校における防災教育を柱とした安全教育カリキュラム開発に係る実践研究について報告するとともに、実践された学習活動についてカリキュラムマネジメントの視点から検討した。

PDF, 要旨 本研究は、1960 年代のネパールにおける国民教育制度整備構想について、「国家教育審議会」(ARNEC) の教育行政計画および教育法規案、さらに当時の公文書等を、地方教育行政制度の整備に留意しつつ読み解き、再検討することを目的とする。 ARNEC は、必ずしも体系的な教育行政計画を示していない。しかし、教育行政における基本方針からは、政府による財政援助の強調、監査と視学を通じた中央による地方教育の管理など、その既存制度の継承および中央集権的傾向が看取できる。 教育法規案においてこの傾向はより顕著である。すなわち、教育法規案に規定される地方教育行政制度とは、教育省内の公教育局長－県教育局長－郡視学官－学校運営委員会・校長に至るピラミッド組織である。下部機関の自律性は強くなく、また、一般行政の教育行政への優越も明示される。, The purpose of this paper is to reconsider national education system development conception in Nepal in the 1960s by analyzing educational administration plan of ARNEC, drafts of education act, document of MoE, and so forth. ARNEC did not provide a systematic educational administration plan. However, from the basic policy in education administration, the inheritance of the existing system and the centralized tendency can be seen, such as the emphasis on financial assistance by the government and the central management of local education through audits and inspections. This tendency is more pronounced in drafts of educational act. The local ducation administration system stipulated in it was a pyramid organization from the Director of Public Instruction to the school management committee and headmaster. The autonomy of the subordinate institutions was not strong, and the superiority of the general administration to the educational administration was also clearly shown.

学校教育は教科指導と生徒指導を両輪としている。平成29 年3 月に告示された「中学校学習指導要領」では授業における生徒指導の必要性が明示された。これを踏まえ本論文では、国語科の授業において生徒指導の機能を作用させるためのルーブリック評価表を作成し、その有効性について検討する。研究方法は、第2 筆者が実践した授業における振り返り及び学習者である生徒からのリアクションペーパー等に記述されたテキストを質的データとし、教科指導と生徒指導の機能を一体的に捉えた授業分析を行い、その結果について考察する。

PDF, 要旨 本研究は、1971 年の「『国民教育制度』計画」（NESP）の背景解明の一端として、1960 年代後半のネパールにおける国民教育制度整備上の課題について、K.R.Aryal の“Education for Development of Nepal” など当時の諸文献を主たる対象にして、「教育を通じた国民形成」や「教育の普遍化」に留意しつつ追究することを目的とする。Aryal（1970）は、当時のネパールにおける教育的ニーズとして以下を挙げた：①経済開発のための教育計画策定、②適正な社会秩序のための教育計画策定、③国家の文化遺産を保存するための教育計画策定、④国家のニーズや教育的ニーズを充足するための教育環境の創出、⑤国家の目標を充足するための既存の教育施設の再建。同書では、既存の教育計画や教育制度がこうしたニーズに全く応じていないとして、教育制度の刷新が強く提言された。こうした同書における提言は、少なからずNESP へ影響を与えたと考えられる。, The purpose of this study is to examine the effects of project-based learning on student attitude toward learning English. Quite a few students enter university feeling uninterested in learning English. Some may have feelings of helplessness due to past failures in their English learning. Others may have trauma from having to cram grammar knowledge for entrance examinations. The true purpose of learning English is to learn the language as a means of communication to connect with people of different linguistic and cultural backgrounds. Thus, learning grammar knowledge itself should not be the ultimate goal. Project-based learning (PBL) provides students with opportunities to discover that for themselves by experiencing language use for meaningful purposes. In this study, students worked in collaboration with peers to create a YouTube video to introduce Japanese culture to the outside world. Quantitative analysis of questionnaires taken from students indicated that there was no significant change in student attitude toward English learning. However, qualitative analysis of students’ self-reflection after the PBL suggested that many of the students noticed the importance of looking at things from multiple perspectives and communicating with peers in collaboration towards the same goal.

本論文は、2 つの教育実践研究からなる。まず、研究1 では「中学生より高校生の方がいじめ認識は高いだろう」という仮説を立て、中学1 年生及び高校生1 年生を対象とした共通題材による授業を実施し、授業内における生徒のいじめ認識についてχ2 検定とKJ 法による分析を行った。その結果、中学1年生と高校1 年生のいじめ認識の差は少なく、題材の3 場面では女子の方がいじめ認識の高い傾向が見られた。次に、研究2 では研究1 の題材を基盤とした「いじめ予防プログラム」を中学1 年生を対象に実施し、終了後の生徒のふりかえりを分析した結果、いじめ認識の向上が見られた。それら2 つの研究から、生徒のいじめの認識を高めるプログラムの導入は、いじめ予防に資する教育活動になることが示唆された。

A 市立B 中学校では、X 年からX+2 年の3 年間にわたり「育てる教育相談」の考え方を生かした授業を通して生徒指導の充実に努めてきた。その結果、全学年・学級において、生徒は落ち着きのある学校生活となり、学力の向上が図られた1。本論文では、B 中学校の縦断的教育実践について、すべての授業に導入された「育てる教育相談」の考え方を生かした教育方法の効果について、第2 筆者の語りやアンケートなどから検証した。そこでは、校内研修組織を教員経験年数の少ない若手教員中心としたことがベテラン教員の協力を促進させ、このことが「育てる教育相談」の考え方を生かした教育方法の共通理解を深め、共通行動が図られることとなり、このことがB 中学校の授業改善の大きな要因になったことが示唆された。

PDF, 要旨 本研究は、1971 年の「『国民教育制度』計画」（NESP）の背景解明の一端として、1960 年代後半のネパールにおける国民教育制度整備上の課題について、二つのユネスコ教育調査団報告書（草稿）、二つの経済開発計画を対象にして、教育を通じた国民形成や教育の普遍化に留意しつつ追究することを目的とする。NNEPC やARNEC 報告書における国民概念に照らせば、これらの文書において教育によって形成されるべき「国民」とは、主に「職業人」「労働者」ということになる。他方で、民主主義国家を担う市民や、多様な能力を有する個人などについては上記の文書において明確に言及されていない。1962 年憲法の下で、「公式の」「ネパール文化」が醸成されていったと巷間解されているが、今後は、こうした通説を具体の資料に基づいて検証していく必要がある。, The purpose of this paper is to clarify problems on improvement of National Education System in Nepal in the late of 1960s by analyzing five year plans, report of UNESCO team, and Similar Documents. It is generally accepted that under the new constitution in the 1960s, "Nepalese citizens" who acquired “Nepalese culture” through education were formed. However, the above documents did not explicitly state the development of "Nepalese citizens" through education. In the future, it is necessary to verify the established theories using appropriate materials.

学習指導要領に示される教育課程は教科と教科外からなる。特別活動は教科外に位置付けられた正規の授業であり、初等・中等教育に共通する学校行事として文化的行事がある。しかし、文化的行事の記録は残されていないことが多く、その研究は極めて少ない。それゆえ文化的行事に関する調査研究をしていくことは、特別活動研究において喫緊の課題である。本研究の目的は、現在の文化的行事の実態を把握し、今後の文化的行事のあり方について提言することにある。そのために本論文では、全国的な実態調査による基礎的データ収集を図り、現在の文化的行事の状況を分析・検討することをとおして、今日の文化的行事の教育的意義と課題について考察した。

現在の学校は、問題行動等生徒指導上の諸問題が増加しており、その対応が社会問題化している。問題行動等を解決する学校の対応には、対症療法的な支援と、未然に防ぐ予防的な指導がある。本論文では、未然防止の視点から「育てる教育相談」の考え方と方法を援用した教育実践の効果について報告する。実践校A 市立B 小学校は、港湾都市の下町を校区とした小規模校である。筆者は、B 小学校のスクールアドバイザーとしてX 年からX+2 年までの3 年間、生徒指導の機能を活かした「育てる教育相談」のカリキュラム開発および教育効果の検証に取り組んできた。その結果、児童の問題行動等の減少ならびに学校適応の向上が見られた。

本研究では、アサーション・トレーニング教育用プログラム（Assertion Training Program for Education：ATPE）が、中学生の非認知的（社会情緒的）能力の1 つである自尊感情（self-esteem）に及ぼす効果を検討した。本研究の調査対象は、中学校2 年生の男子23 名と女子10 名である。期間はX 年5月からX ＋ 1 年2 月の10 か月間であり、1 回のATPE は50 分間、隔週で開講される選択科目として合計16 回実施された。ATPE の効果測定には、Janis & Field（1959）による自尊心尺度を遠藤ら（1974）が日本語版として作成したSE 測定尺度を用いた。ATPE の事前・事後得点を整理し、対応のあるt 検定を行った。その結果、SE 測定尺度の2 つの下位尺度に有意な差がみられたことからATPE は、中学生の自尊感情の向上に資することが示唆された。

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